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宮司講話集

「オウム真理教は特殊ではない」 
 平成7年10月19日 船岡大祭にて


 本日は皆様大変お忙しいところ船岡祭にご参列賜りまことに有難うございます。お蔭をもちまして今年の船岡祭も滞りなく執り収める事ができ心より厚く御礼申し上げます。

 さて鎌倉幕府の法律『貞永式目』の中に「神様は人の敬によって-人が敬うことによって、威を増す-ご神威が高まり、人は神の加護により運を添う−運気を強める」とございます。皆様が大変ご多忙の中、毎年毎年船岡祭にこのようにご参列賜り、建勲神社の大神様を心から敬って頂ける事によりご神威が弥増す事となり、本当に有難い事でございます。又、ご神威の弥増した大神様のご加護を受けられ、皆様の運気が強まり、家運隆昌に向かわれますよう、心よりお祈り申し上げます。

 さて今年は春以降ずっと夏も秋になってもオウム真理教の問題が大きく取り上げられております。オウム真理教に関しましては、世間では全く特殊なもので、武器を作ったり人を殺したり、政府を転覆させようとする等、宗教とは全く関係なく、ごくごく特殊なものであるといわれていますが、本当にそうでしょうか。
 織田信長公の頃は比叡山を始め巨大な寺院は完全に武装集団でありました。又、加賀の国では、国守である富樫氏が追放され、一向宗のお坊さんが加賀の国一国の政治をすべて行っておりました。九州方面ではキリシタンが神の国を作るといって、お寺やお宮を片っぱしから打ち壊していました。ヨーロッパではカトリックとプロテスタントが対立して、人口の10分の1の人々が殺されたり追放されたりしました。
 こういう事をふりかえってみますとオウム真理教はすこぶる極端ではありますが、特殊な宗教であるとはいえません。信長公が427年前、永禄11年10月19日に京都に始めて上京されてから、数ヶ月のあっという間に近畿一円をまとめ上げられましたが、このあと一向宗を滅ぼし、本当に政治経済すべての面で統一を果たすのに、なんと10年の長い歳月がかかりました。たった1万人のオウム真理教が治安のいい現代の日本の中にあってあれだけの事をするのですから、あの時代に狂信的な100万人単位の信徒を擁する大教団の力は想像を絶する強大なものであったろうと思われます。信長公がそういった教団の軍事力を奪い、政治経済と純粋な宗教活動を分離された事は、大変な事であったと今さらながら痛感されます。又、逆に信長公によって牙をぬかれた宗教に400年間慣れてきた日本人は今頃本来宗教のもっている凶悪な面、特にある1人の人間が教祖となっている宗教の凶悪な面をオウム真理教の中にみて、本当にびっくりしているとも申せましょう。
 以上、オウム真理教は決して特殊なものでない事と、オウム真理教の行状や信者の狂信ぶりをみて、400年前の信長公は本当に大変だったとつくづく思われます事を申し上げた次第でございます。

 さて来年のNHKの大河ドラマは豊臣秀吉に決定されました。前半は信長公の事が随分放映されると存じます。今度の大河ドラマの原作は堺屋太一さんで大変楽しみに存じております。

 本日は皆様ご参列頂き本当に有難うございました。先に申し上げました通り、毎年このように皆様にご参列賜って船岡祭を厳粛に斎行する事によって、建勲神社の大神のご神威が弥増します事を心より有難く存じます。又、皆様が大神様のご加護を受けられ、運気を強め、大難を小難にまぬがれ、ご健康にご発展なさいますよう重ねてお祈り申し上げます。本日はまことに有難うございました。

(以上)