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宮司講話集

「我交わる故に我あり」
平成13年4月8日 大和祭にて

 一言ご挨拶申し上げます。皆様ご多忙の中、今年も又、神石大平和敬神の大前にお集り頂き、例年の如く大和祭をつつがなく執り行う事が出来、心より厚く御礼申し上げます。
 さて皆様、東大理学部教授で、松井孝典(たかふみ)という著名な宇宙物理の先生がおられますが、ナサ、アメリカ航空宇宙局で長年惑星の研究をされ、「水惑星の理論」という論文で世界的に注目を集めた方であります。私達の住むこの地球は、先生の理論によりますと、火の玉、原始地球という均一的な状態から冷える事によって徐々に異質なものに分かれて出来てきました。マントルと核、海と大陸プレート、大気圏と成層圏等に分かれて、分化して現在の地球が形作られてきました。そして大切なことは、最初の均質的な火の玉の時は、混沌として無秩序であったものが、分化して色々な構造、色々な物質に分かれると、それと同時に分かれた物と物との間に秩序が形成された点であります。
 そして松井教授は地球誕生に係わるこの理論、つまり均質だが無秩序な状態が分化して異質だが秩序のある状態に変わってきたという理論を生物界にも敷衍して、地球上の何百万種といわれる動物植物も、一つのものから分化し、分かれて出来てきたものであって、ダーウィンのいう様に、あるものが異なったものに進化して出来てきたものではないとおっしゃっています。進化論は確かに人間中心主義の考え方であって、進化したものと、進化する前のものとの間に断絶があります。生きとし生けるもの全ては分化したもの、分かれて出来てきたもので、元は同じであるという方が正しいと思われます。
 又、松井教授は、ものが分化していくと、分化したものとものとの間、個と個の間に秩序がないと成り立たないという理論を、人間そのものにも敷衍して面白いことをおっしゃっております。
 デカルトがあの有名な「我思う故に我あり」といったのは間違っている。人間の自我というのは何も始めから確立していて、その確立した自我が思うのではない。人間は母親から生まれて以来ずっと親や兄弟や他人、又、動植物や自然と交わり、つまり自分以外のものと交流し、他との関係性において次第に自己という概念が出来てくるのであって、「我思う故に我あり」でなく、「我交わる故に我あり」であるとされています。
 この様に、ダーウィンやデカルトに代表される近代ヨーロッパの基本的考え方の原理を、我々現代人は当然の常識として受け入れていますが、これを否定しているところが面白く、進化するのでなく分化するのだとか、絶対的な個性などなく、他との関連性において、つまり交流することによって個が存在するという考え方は、この新しい世紀の人間の基本的考え方のひとつになると思います。
 又、出居清太郎教祖が「一人で考えているのではなく、多くの人と交流しなさい。特に同じ修養団捧誠会で自己を磨こうとしている多くの仲間とどんどん交流しなさい」とおっしゃったことに一脈通じるものがあると存じ、本日皆様にご披露させて頂きました。

 次に昨年10月そちらの大鳥居を全面改修致しましたので、ご報告させて頂きます。昨年、出居茂総裁を始め、大平和敬神の世話役の皆様によって大鳥居内に大きなご神道燈を一対ご奉納賜りましたが、その折、大鳥居が大分いたんでいるのではないかと気付きました。京都府の補助金を受けまして全面改修することとなり、色々調べてみましたところ、建勲神社の大鳥居は素木造明神型鳥居としては、明治神宮の大鳥居とともに全国屈指の大鳥居で、すべて台湾桧で出来ており、今では大口径の台湾桧は入手不可能で極めて貴重なものとの事であります。鳥居はその材料や形で色々と種類がありますが、朱塗ではなく、素木造の明神型鳥居としては建勲神社の大鳥居は完成度の高い代表的なものだとの事でございます。

 本日は皆様ご多用の中、よくご参拝賜りました。又、日頃は関西地区の各支部の皆様には、毎月毎月清掃奉仕を給わり、心より厚く御礼申し上げます。皆様のご健勝と捧誠会の弥栄をお祈り申し上げ、本日のご挨拶とさせて頂きます。

(以上)