①本殿 ②神門 ③拝殿 ④神饌所 ⑤手水舎 ⑥祭器庫 ⑦社務所 ⑧貴賓館 ⑨大鳥居 ⑩義照稲荷神社 ⑪命婦元宮 ⑫船岡妙見社 ⑬「大平和敬神」神石 ⑭「敦盛」歌碑
① 本殿
船岡山山頂に東面して建つ。一間社流造檜皮葺。四周に組高欄付縁をまわし、正面に木階、浜床、浜縁を付ける。身舎は円柱、向拝は面取方柱。組物は舟肘木で、妻は豕叉首。二軒繁垂木とし、打越垂木を疎垂木とする。簡明な意匠になる近代本殿の好例である。
② 神門
本殿の前方に位置する。桁行1間梁間1間で、前寄り柱筋に両開戸をたてる。切妻造妻入檜皮葺。円柱で、柱上に舟肘木を置き、内法貫や虹梁、桁で固める。梁行中備に蟇股を置き、妻は豕叉首。緩い起こり屋根に、一軒疎垂木とし、穏やかな表情を見せる。
③ 拝殿
本殿の東方に位置する吹放ちの拝殿。桁行2間梁間3間で、四周に切目縁をまわす。入母屋造妻入檜皮葺で、妻を木連格子とする。拭板敷で、折上小組格天井を張る。軒反の大きい優美な外観になる。
内側に織田信長公三十六功臣のうち十二功臣の額を飾る。
④ 神饌所
本殿透塀の南方に、東西棟で本殿に正面を向ける。桁行5間梁間3間規模の入母屋造檜皮葺。内部は桁行に3室に分け、東に土間と台所、中央に板間、西に8畳間を配する。天井はいずれも棹縁天井。入口土間に両開妻戸、縁に面して舞良戸をたてる。神饌所の好例。
⑤ 手水舎
拝殿の東南方に所在する。桁行1間梁間1間、東西棟の切妻造檜皮葺で、緩い勾配とする。礎石上に方柱をたて、内法貫で固め、舟肘木を介し、虹梁や桁を支持。豕叉首を組み、軒は一軒疎垂木。周囲に菱格子欄間を置く。化粧屋根裏天井で、中央に石製水盤を置く。
⑥ 祭器庫
拝殿の東北方に位置する。南面する土蔵造2階建で、入母屋造本瓦葺の置屋根とする。地盤高の関係で2階に出入口を設け、1間庇を付ける。外壁は漆喰仕上げ。庇は桟瓦葺きで、柱型を表し、塗り込める。側・背面に庇付窓を設け、外観を飾る。
⑦ 社務所
祭器庫の東方に位置する。貴賓館の最北に南面して建ち、廊下などを介して貴賓館に繋がる。入母屋造桟瓦葺で、玄関正面にこけら葺庇を付ける。中央東寄りの玄関土間を挟んで、東に旧宿直室、西に事務室、その西に旧宮司室を設ける。内法が高く、その上に小振りな屋根が載り、軽快な外観をなす。
⑧ 貴賓館
拝殿の東方に位置する。南北棟の入母屋造桟瓦葺で、緩やかな起りになる切妻造桟瓦葺の車寄を西面して付ける。桁行3間半梁間4間半で、南・東・西三方に跳高欄付切目縁をまわす。洛北から東山を望む、瀟洒な近代和風建築。
⑨ 大鳥居
船岡山山麓、船岡東通に東面して建つ。木造の明神鳥居で、幅5.5m高さ7.2mに及ぶ。礎石上に円柱を建て、貫と嶋木、笠木で固める。材は台湾阿里山産の檜で、素木のままとする。大規模で笠木も大きく反り、神域の荘厳な結界を構成する。
⑩ 義照稲荷神社
船岡山中腹、境内の東北方に南面して建つ。一間社流造銅板葺。宇迦御霊大神、 国床立大神、 猿田彦大神の三柱の大神を祀る。
奈良朝の昔、此の船岡山を中心として帰化人秦氏により五穀豊饒織物工芸の稲荷信仰が盛んに広められ、現在の義照稲荷社の発祥となったとされる。
⑪ 命婦元宮
義照稲荷神社の西隣に南面して建つ。一間社流造銅板葺。伏見稲荷大社命婦社の親神「船岡山の霊狐」を祀る。
伏見稲荷大社の由緒記集成によれば、同大社の命婦社は船岡山の霊狐が祀られていると記されている。船岡山と伏見の稲荷山とは極く古い昔より神霊の交渉が多かったようで、この社はまさに伏見のお稲荷さんの元宮であり、秦氏の守護神として今日の西陣織の祖神をなしている。
⑫ 船岡妙見社
手水舎の南西方に位置する。船岡山の地の神・玄武大神を祀る。今より千二百年昔、平安建都に際し風水が相される。船岡山は大地の生気のほとばしり出る玄武の小山と卜され、ここを北の起点として平安京が造営された。玄武信仰は古くから行われ宝永4年(1707)発行の「霊符縁起集説」に「玄武神は亀なり。北方に鎮り諸厄を祓い給う。玄武神は今の妙見菩薩にして童形なり。玄武の大元は国常立尊なり。水の神にして宅神なり。病魔退散の神なり」と見える。船岡妙見は船岡山の地の神として諸厄消除・万病平癒・家宅守護の御神徳が讃えられている。
⑬ 「大平和敬神」神石
昭和45年(1970)11月10日、修養団捧誠会より当神社旧本殿跡に建立奉納された高さ6mの雄渾壮重な大神石で、建勲神社宮司故松原宏整大人の天啓による神語「大平和敬神」の五文字を、同会故出居清太郎総裁が生前唯一の直筆として書き上げたものである。毎年4月には全国各地より捧誠会の会員が多数参集して神石の前庭で祭典を執り行い、「万物博愛」の実践により心の平和・家庭の平和ひいては世界平和を達成するべく祈願を行う。
⑭ 「敦盛」歌碑
貴賓館の南方、表参道沿いに所在する。
桶狭間の合戦出陣に際し織田信長公が舞われた「敦盛」の一節を刻んだ歌碑。
人間五十年
下天の内をくらぶれば
夢まぼろしの如くなり
ひとたび生を得て
滅せぬ者のあるべきか